人はなぜ仕事を辞めたくなるのか~私の場合はこうでした

今日日、転職をすることは全く珍しいことではなくなりました。

 

むしろ40歳になるまで全く転職をしない人のほうが珍しいのではないでしょうか。

 

海外ではキャリアを重ねるために転職をすることが、むしろ好意的に見られますし、私の実体験からしてもいろいろな仕事や職場を体験することは、見聞を広めることになり、多角的な視点を養ってくれるので、人生に良い影響を与えてくれます。

 参考:「転職回数の多い人」は本当にダメなの? 現役ヘッドハンターに聞いてみた | キャリコネニュース


ただし就職が結婚ならば転職は離婚に近いもの。離婚は結婚よりも大きなエネルギーが必要だといいますが、転職においても大きなエネルギーを要するので、できるのならば同じ職場で定年まで働き続けたいと考える人も多いです。

 

では人間が転職を決定するまでに、どのような点で不満を抱き、その思いをつのらせていくのか。私の実体験からお話を致します。

 

私はある月刊誌で編集の仕事をしていました。編集といってもライターに指示を出して書かせることはあまりなく、自分で取材をして記事を書く、編集記者という立場に近いものです。

 

雑誌のジャンルは自分が興味を持つ分野に近いものであり、入社してから数年は新人扱いであまり重い仕事を任されることもなかったので、それほど給料は高くないながらも楽しく働いていました。しかし徐々に職場に対して不満や不安を抱いていくことがありました。

 

 

① 世の中が便利になりすぎたせいで、逆に労働時間が伸びた
雑誌の世界でもどんどん制作に関する技術革新は、在籍中に進んでいきました。ノートPCを持ち運び、即座に外出先で記事を書き、メールで送って入稿できます。

 

写真も入社した頃は21世紀にもなって銀塩社寸を使っていましたが現像代がかなりかかるので、デジカメに変更し、撮影した写真はすぐに使えるように。他にも紙面をイラストレーターでデザインできるようになるなど、IT化が進むことでどんどん便利になっていきました。

 

それで普通ならば仕事にかける時間が減り、早く帰れる、他のことに時間を割くことができるようになるはずなのですが、なぜか月刊誌なのに、締め切りギリギリまで紙面が作れるだろう、気になった点は直ぐに修正できるだろうということで労働時間がどんどん伸びることに。

 

それでも売り上げにつながるようなクオリティアップならばよいのですが、結局は編集長の自己満足に付き合わされるだけで、サービス残業が毎月増えるだけになっていました。

参考:業務のIT化で真の効率化を達成するには|業務効率かについての基礎知識

 


② 収益源が減っているのに新しいことに取り組もうとしない
それでも紙面の内容にはそれなりの定評があり、その意味では私も誇りを持って働いていました。しかし時代はやはり紙からWEBへ移行する時代。売上の減らない雑誌などありません。

 

そこで月刊誌の売上の低下を補うために私が会員向け電子版の発行を提案したのですが「本誌が読まれなくなる」「紙でこそ価値がある」ということで取り付く島もありませんでした。どうにも編集長の権限が強すぎで、意見を下から吸収する風土がなかったのです。

 

編集長は当時60前、65が定年だとしてもまあ自分が辞めるまでは雑誌は持つだろうという目算もあったのでしょう。

 

しかし若い私達としては、数十年後まで考えなくてはいけないのです。

 参考:会社の中にいるからやれること ー「組織風土改革をフューチャーセッションで」 | OUR FUTURES

 

 

③ 編集長への依存度が高すぎで、後継者の育成も行っていない
編集長の独裁政権とも言える編集部でしたが、独裁するだけあって編集長は業界内で有名であり、名の知れた人でした。企画力もあり他を巻き込む行動力も持っています。雑誌の収入源となるスポンサーの上層部とも親しいので、広告を持ってくる力もあり、やはり豪腕で尊敬できる面も大いにありました。

 

それだけに私の中にも「この雑誌、この人がいなくなったらどうなるのだろう」という不安があったのも確かです。

 

もちろん自分が後継者になるという意欲を持たなければいけないのですが、上に先輩も多くいるのでその時にその発想はあまりなかったです。ただ先輩方の中でデスク的なポジションの人もおらず、常に編集長の指示で動くだけ。後継者となる人間が全く育っていないのも不安を掻き立てる一因になりました。

 

 

④ 結局給料が伸びる見込みが無い
結論として、20代のうちは楽しく仕事のことだけ考えていればよかったのですが、家族を持つことを意識した時に40歳、50歳でこの職場で自分は働いていられるのか、というビジョンが浮かんできませんでした。

 

発行部数も減少しており、売上の穴埋めのため広告ばかりの増刊を出して糊口をしのぐような仕事の内容にも、退屈さを抱いていました。


しかしそんなことをしないと売上が確保できず給料も上がりません。

 

実際に徐々に財政は悪化し、給料も毎年数千円しか上がらないため、家族を養えないのではないか、雑誌も利益を出せず、潰れることはないにしても、賞与が無くなり給料が伸びないだろうという将来しか想像できないようになっていったのです。

 

家族を養うという現実と、楽しく仕事をしていたいという理想。

 

その狭間で心を動かすことは、家の大黒柱とならなくてはいけない男性にはよくある葛藤かもしれません。私も結婚を意識した頃に、その葛藤で随分悩むことになったのです。